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No.16「下町ロケット」

今回の一冊は人気作家、池井戸潤先生による一冊、「下町ロケット」です。

 

池井戸先生といえば「鉄の骨」や半沢直樹シリーズの原作である「オレたち花のバブル組」などが有名ですね。数々の賞を受賞されている先生ですが当人曰く、受賞を目的に書いているわけではないそうです。完成させた結果それらが評価されているだけなので、まさに楽しんで小説を書く生粋の文豪と言っても良いでしょう。

 

本作は佃製作所という中小メーカーが大企業の圧力に抵抗しながらも、自社の技術力を信じてロケット開発に挑むというストーリーです。池井戸先生ならではの手に汗握る展開のお陰で、あっという間に読んでしまいました笑

 

ストーリーは佃社長が以前研究者として携わっていた、ロケット打ち上げのシーンから始まります。ロケットの打ち上げは結果的に失敗に終わり、その責任は佃社長に擦り付けられました。居づらくなったその職場から逃れるように、佃は父親の家業を継ぎ、早くも7年が経過します。

 

ここから佃製作所は苦境の連続に立たされます。まず開口一番に大口契約の大手企業が一方的に取引を打ち切る、それを知った銀行が救済の融資を渋る、更に法廷を生業とするかのような大手企業が特許侵害で訴えて来る、といった具合です。

 

更にはロケット打ち上げを全般的に手掛ける大手企業も佃製作所に関わってきます。ロケット開発の際にどうしても必要な技術を、実はタッチの差で佃製作所が開発しており、プロジェクトを断念しないためにも佃製作所の特許をなんとかして手に入れたい、といった具合です。

 

大企業と中小企業の双方が特許を巡って凄惨な争いを繰り広げます。佃社長は手塩にかけて育てた会社を守ることができるのか!?といったところが大まかなあらすじでしょう。但し、大企業にも正義があり、中小企業にも時として悪はある、といった描写も描かれているため、一概に勧善懲悪ものというわけでもありません。それぞれの人間が様々な思いを交差させるという点にこの小説の面白さがあると感じました。