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No.23「オペラ座の怪人」

今回の一冊はガストン・ルルー不朽の名作、「オペラ座の怪人」です。何度も映画化されている不屈の物語ですが、映画や舞台は所々脚色されているということもあり、原作とは少し内容が異なります。昔の西欧文学ならではの私的な表現が盛り沢山だったので、現代文学にはない独特の雰囲気を感じました。

オペラ座には幽霊が出るという噂が立っていました。皆が口々に幽霊の存在を裏付けるような事を話しますが、実際に出会った人は誰もいません。しかしその存在は物語が進むにつれ明らかになっていきます。支配人など一部の人々は確かに幽霊の存在を認めていたのです。

一方、オペラ座の歌姫クリスチーヌは彼女の幼少の旧友ラウル子爵と出会い、ラウルはこの出会いを機に彼女に恋をします。しかし彼女は彼の恋心を拒絶します。なぜなら彼女はオペラ座の幽霊に見初められていたからです。姿形は見えずとも、彼はオペラ座に住まう天の声としてクリスチーヌの歌唱レッスンをし、彼女もラウルへの思いを押し殺しながら、幽霊を受け入れていました。

しかし、幽霊はラウルの恋心を知り、彼女を拉致するという暴挙に出ます。ラウルは彼女を救うためにオペラ座の地下へと乗り込みます。彼は迷宮のような地下道をさ迷い、挙句の果てには幽霊の手によって殺されかけてしまうのですが、クリスチーヌが幽霊に愛を誓ったことによって、幽霊は彼らを解放します。しかし幽霊はクリスチーヌの聖女とも思えるような慈愛の心を知り、彼女とラウルの愛を認め、彼らの前を去ったのでした。

嫉妬に狂った男の狂気の物語であり、真の愛を描いた物語でもあると感じました。当時のオペラ座は表舞台と楽屋裏ではかなりの違いがあったようですから、その社会的な陰陽を風刺しているのかもしれません。久々のラブロマンスなので始めは文体に違和感を覚えましたが、読み進めていくと意外とすんなり入っていくものです。

食わず嫌いは良くないですね。