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No.3「のぼうの城」後編

のぼうの城 下」では忍城の戦いの初戦から終戦までを描いています。主に成田家の防衛成功、三成の水攻め、そして最後の攻城戦の3つです。

緒戦は成田家の正木丹波守、柴崎和泉守、酒巻靱負の三将が各々の軍略を発揮したまさに戦国時代を象徴するような戦いでした。やはり敵を面白いように撃退していく様は読んでいて心地がいいですね。

 

しかし、次の戦いでは三成は大量の資金を投じて村人たちを動員し、巨大な堤を完成させます。水攻めといえば秀吉の水攻めを想起させますが、このとき築いた堤防はなんと備中高松城の2倍の大きさだそうです。これにより、忍城は多大な被害を被ります。

 

これを受け、戦況を打開すべく、のぼう様こと成田長親はなんと単独で(正確には船の漕ぎてと共に)敵の目の前まで迫り、ひょうきんな踊りを披露します。一方忍城攻略を焦る三成はのぼう様を狙撃させますが、結果としてこの行動は三成方の農民の反感を買い、一部の村人が堤を決壊させてしまいます。

 

そして最後の戦いでは三成は正攻法での城攻めを命じ、忍城方も最早これまでと悟ったとき、小田原城降伏の使者が届き、忍城攻めは終わりを迎えます。

 

その後、三成と長親が対面で会うことになるのですが、最後の最後まで長親の評価は定まらずじまいでした。なぜ名将なのか暗愚なのか白黒つかなかったというと、やはり長親の心理描写がなかった点にあるでしょう。ですが、全てのことがハッキリとわからないからこそどんどん読み進めてしまったので物事には多少の謎があったほうが面白いですね。

 

一風変わった時代劇小説ですが、話し言葉や表現が少し現代的で、村人と家老が仲よさげに話し合うという朗らかな描写もあり、非常に読みやすかったです。