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No.2「のぼうの城」前編

今回ご紹介するのは、和田竜先生の「のぼうの城」です。

 

和田先生は「村上水軍の娘」や「忍びの国」など他にも戦国時代をテーマにした小説を手掛けています。

 

本作は小田原征伐の激戦区、忍城の戦いを描いたものです。攻め手の石田三成、守り手の成田長親(というより家老の正木利英)双方の視点で物語が進行していくので、とてもテンポが良くて読みやすかったです。

 

主人公の成田長親は主君成田氏長のいとこですが、農民や小者に「のぼう様」と揶揄されるほどの木偶の坊です。ですが、こののぼう様は何故か人を惹きつけるんです。領民のみならず家臣までもが馬鹿と罵っていてもなぜか魅了されてしまう。 

 

そんなのぼう様を他所に、世間では秀吉が小田原征伐を開始。主君氏長は北条に味方しつつも秀吉と内通。城に残る武者達に敵が攻めてきたら明け渡すよう密命を出します。

 

ところが長親はこともあろうに三成の降伏勧告に対して逆に宣戦布告を言い渡すのです。家臣たちはのぼう様の発言に愕然としますが、坂東武者の矜持を刺激され、全面戦争へと舵を切ったのです。

 

のぼう様は巨体にも関わらず、武術はからっきし、知略なども全くなく、好んで農作業をするような侍のプライドもないような人物ですが、そんな彼だからこそ、家臣や領民を奮い立たせたという展開は今までの歴史小説にはないものでした。

 

私は「武田信玄」や「天と地と」など読んできましたが、大体の武将は武力や知略を持ってして人を惹きつけていました。そういった戦国武将の魅力を一切抜きにしてこのように面白可笑しく武将を作り上げたのは、私に戦国武将の新しい見方を与えてくれましたような気がします。

 

忍城の戦いがどのように描かれるか、下巻も楽しみです。