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No.19「帰ってきたヒトラー 下」

前回に引き続き「帰ってきたヒトラー」のレビューをしたいと思います。今回は下巻です。

 

前回私はヒトラーがドイツを再びナチズムに陥れるのではないかという予想をしましたが、話の終着点は全くといっていいほど穏やかでした。

 

過激な演説をしたヒトラーはビルトという大衆紙から強烈な批判を受けます。にも関わらず毅然として立ち向かうヒトラーの姿勢はついに相手を屈服させ、その人気はますますうなぎ登りです。遂には政治家との対談を実現させるほどの文化人になりますが、ヒトラーの過激な思想に反感を持った人たちが彼を襲います。病院で目覚めたヒトラーは見舞いに来た付き人と他愛のない会話をしたところでこの物語は幕を閉じます。

 

あとがきを読んでみるとこの本の印象は大きく変わります。ヒトラーを怪物として描くのではなく、彼が何故ドイツの総裁であったかという人間的な魅力に焦点に当てて、作者はこの小説を書いたそうです。なので勧善懲悪ものとして描かれた今までのヒトラーとは一線を画すがゆえに、これほどまでの人気を得たのではないでしょうか?ただ悪を悪として説明するのではなく、彼が大衆の支持を得た理由を模索することに、ナチズムを理解するヒントがあると作者は考えているようです。私は注釈を合間合間に読んでいたので作品の雰囲気をイマイチ掴みきれませんでした。もっとドイツを知るために、今度はわが闘争を読んでみようと思います。